3つの庭が織りなす鑑賞のための空間
廣澤美術館
本事業の造園計画は、敷地中央部に配置された三角形の建物形態から遠心的に派生した3つの庭と、それらを回遊できる散策路で構成し、事業主がこれまで収集した筑波石や真壁石をはじめとする約5000tの景石や43種約570本の中高木などの造園材料を活用して、建築と庭が一体となった鑑賞空間の創出を試みたものである。なお、3つの庭のうち、美術館内から臨むことのできる枯山水式蓬莱庭園の様式で構成された西面の庭は、作庭家の齋藤忠一氏が担当している。本計画地は、近くを流れる小貝川の低位段丘面に位置し、砂礫層が堆積する地質となっており、かつては採石場が点在していた。現在は埋立てられて平坦な地形となっているが、その埋戻土の影響により一部透水性の悪い場所が散見された。そのため、周辺敷地の低位面より約40cm高い位置に建築地盤が設定され、庭のエリアにおいても、良好な植栽基盤を形成するために、大部分を良質土で盛土し、高低差は敷地境界沿いに設けたコンクリート擁壁で処理している。さらに、高木植栽地では、周囲を石組みによる土留めで高植えを行ったり、地植えの際は、通常の2倍以上の直径と深さを設けるなどして、持続可能な植栽基盤を確保している。また、地域貢献を目的として、本計画を含めた施設全体の事業展開を図る事業主の方針に沿って、庭の施工はすべての工種において地元の施工者が担当している。また、今回のような庭づくりは、竣工後のこまめな「手入れ」が必要不可欠となるため、この施工者選定は、施工から維持管理に至る一貫的な体制を確立する意図も含まれている。建築工事の完了後にスタートした造園工事は、施設内にストックされた景石や樹木の種類、形状寸法に応じて現場内での微調整を繰り返し、時に設計変更を行い、定期的に設計者、施工者、事業主とのコミュニケーションを重ねながら、約1年半の施工期間を通じて丁寧に造りあげていった。そして、その途中経過を関係者間で共有していたことで、竣工後の維持管理体制へスムーズに移行することが可能となった。そして、本計画の基本方針である「時間とともに成熟する美術館」の実現に向け、竣工後の取り組みが今後も継続して行われていくことに期待している。
| 竣工 | 2020年04月 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県筑西市 |
| 事業主 | (株)廣澤製作所 |
| 敷地面積 | 9837.31m2 |
| 建築 | 隈研吾建築都市設計事務所 |
| 種別 | 美術館 |